アルバニアのソプラノ、インヴァ・ムラによるトゥーレの王です。
昔トゥーレにひとりの王がいました。
生涯を終えるまでたいそう誠実な王でした。
王妃は先立つとき
王にに金の杯をのこしました。
王にとってその杯は何より大切なもので
宴のたびにその杯で飲み干しました。
その杯から飲むたびに
王の目は涙であふれるのでした。
やがて王にも死期が近づくと
王は自分の町や国を数えて
残らず跡継ぎに譲りましたが
杯だけは別でした。
王は王族の宴の席に座して
騎士たちはその周りに居並びました。
それは海を見下ろす城にある
気高き父祖の間でのことでした。
王はやがて立ち上がり
最後に残った命の血潮を飲み干して
その聖なる杯を
潮の中へ投げやりました。
王は杯が落ち、飲み込まれ
海深く沈むのを見ました。
その目は深く閉ざされ
もう一滴も飲むことはありませんでした。
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